【最新版】Bill 96とは?カナダケベック州の言語法と企業の対応ポイントを徹底解説


はじめに
カナダ・ケベック州では、2025年6月1日から「Bill 96(法案96号)」の最終施行段階が始まりました。本ブログでは、トランスパーフェクトのウェビナー「Everything You Need to Know About Bill 96」の内容をもとに、Bill 96の背景、要件、違反時のリスク、そして多言語対応のベストプラクティスをご紹介します。
この法案はケベック州に限った話ではなく、日本企業を含む「カナダ全域でビジネスを展開している企業」にも影響を及ぼします。なぜなら、「ケベック州でビジネスをしている」とは、単に現地にオフィスがある企業だけでなく、ケベック州の消費者向けに製品を流通させたり、Webサイト上で情報を提供している場合も含まれるためです。
そのため、日本企業であっても輸出、eコマース、観光、情報提供などの活動を行っている場合、本件は無視できない重要なトピックといえます。
Bill 96とは?その背景と目的
Bill 96は、1977年に制定された「フランス語憲章(Bill 101)」を拡張・強化する法案で、ケベック州におけるフランス語の使用を徹底することを目的としています。
特に注目すべき点は、企業が提供するWebサイト、製品ラベル、契約書、ソーシャルメディア投稿など、あらゆる情報発信をフランス語で行うことを義務化している点です。
- 2022年に一部施行
- 2023年に第2段階
- 2025年6月1日に最終段階施行 ← 今ここ!
この法律は、ケベック州内だけでなく、同州に向けて商品やサービスを提供している企業にも適用される可能性があります。
なぜ対応が必要なのか?企業への影響
対応しないとどうなる?
Bill 96に違反した場合、以下のようなリスクが発生します:
- 罰金:初回3,000〜30,000カナダドル、日単位で加算
- 2回目以降は倍額に
- 企業への立ち入り調査権限あり(OQLF)
何をすればいい?対応のポイント(対顧客)
- Webサイト全ページ(英語と同等内容)
- ソーシャルメディア投稿
- イベント案内・資料・会場での表示
- 店舗看板・商品パッケージ・契約書類など
つまり、すべての顧客接点でフランス語対応をする必要があります。さらに、作成しただけではなく更新作業も必要となります。コンテンツ更新を英語でした場合はフランス語版の即時反映が必要です。
何をすればいい?対応のポイント(社内)
企業が求められる対応は対顧客のみではありません。雇用や社内資料なども対応が必要です。
対応例:
- 社内マニュアル・契約書・雇用通知などのフランス語化
- 社内イントラネットや業務ツールのフランス語対応
- 従業員向けのフランス語研修の提供
よくある誤解と落とし穴
- ❌「ホームページだけ翻訳すればOK」はNG:OQLFは「言語差別(linguistic discrimination)」という観点から、英語だけで提供されている情報が一部でもあれば違反と見なします。
- ❌ 自動翻訳だけでは不十分:質の低い機械翻訳によって意味が通じない場合、「明確で理解可能なフランス語」の要件を満たさず、違反の対象になります。そのため、機械翻訳+人のチェックは欠かせません。
- ❌ フランス本国向けフランス語ではダメ:ケベック独自の表現や語彙(例:「Supply Chain」は「Chaîne d'approvisionnement」)が求められ、仏仏語をそのまま使うと指摘される可能性があります。
📊 Bill 101 と Bill 96 の比較表(要点まとめ)
項目 | Bill 101(1977年施行) | Bill 96(2022〜2025年施行) |
---|---|---|
法的背景 | フランス語をケベック州の公用語と定義し、社会全体のフランス語使用を推進 | Bill 101を基礎に、企業・デジタル領域における強制力を拡大した法改正 |
対象企業規模 | 従業員50人以上の企業にフランス語化を推奨 | 25人以上の企業にフランス語化を義務化(Francization Program) |
Francization Program | 推奨レベルでの導入支援 | OQLFへの登録とフランス語化計画の提出が義務に。達成後に認定証発行 |
Webサイトの言語対応 | 特に規定なし(当時想定外) | Webサイト全体を英語と同等にフランス語対応する義務あり |
ソーシャルメディア | 対象外 | SNS投稿もフランス語化が必須(言語差別の観点) |
商標・商品ラベル | 商品表示にフランス語を含めることが推奨されていた | 商標・商品説明・パッケージにもフランス語表記が必須。未翻訳部分にも罰則可能性あり |
社内言語(契約・通知など) | フランス語使用が推奨 | 就業規則・雇用契約・社内システムもすべてフランス語化が必要 |
自動翻訳対応 | 特に規定なし | 品質が低く不明瞭な機械翻訳はNG。内容が明確であることが法的要件 |
違反時の対応 | 原則として是正指導、罰則は限定的 | 罰金(最大30,000 CAD/日)、立入検査、是正命令、公開処分などを明記 |
対応期限 | 常時努力義務的な運用 | 2025年6月1日が強制力発生日(段階施行) |
使用すべきフランス語 | 厳密な規定なし | ケベック仏語が基準(仏仏語では不十分な場合あり) |
トランスパーフェクトの対応支援
トランスパーフェクトでは、Bill 96への対応を幅広くサポートしています。
Webサイト対応:GlobalLink Web
- 全ページの自動取得&翻訳ワークフロー構築
- カナダ向けフランス語に特化した翻訳者ネットワーク
- Webサイト公開後の更新も自動で反映
AIと人力のハイブリッド翻訳対応
その他の対応支援:
Webサイトの翻訳だけでなく、資料の全般的な翻訳はもちろん、アクセシビリティの強化、SEO対策、デジタル広告など幅広くサポートが可能です。
OQLFへの対応実績や、ケベック仏語に関するノウハウを活かし、コンサルティングの上、最適なフロー設計をご提案します。
まとめ
Bill 96は、単なる言語法ではなく、ケベック州における消費者の権利保護を目的とした重要な規制です。
違反のリスクは高く、また範囲も非常に広いため、今後ビジネスを拡大する企業にとって「対応しない」という選択肢はありません。
「とりあえず翻訳する」ではなく、「持続的に」「正しく」対応していく体制づくりが求められます。
本記事が、皆様の対応準備の一助になれば幸いです。